2013 . 11 . 11

まぶたの機能と美容医療Ⅹ 眼頭切開3 -症例供覧-1ヶ月後 目頭切開の仕組み

直りました。約1ヶ月前に行った。切らない眼瞼下垂手術NILT法とZ形成よる目頭切開手術の症例の1ヶ月後を提示すると共に、何故目頭切開が、目を大きくさせるのか、もう一度Z形成術法に付きシミュレーション画像を加えながら、説明します。

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この画像は、前回「切らない手術と切る手術。」の回にも提示しました。この症例では、目頭切開と、切らない眼瞼下垂手術NILT法を施行しているのですが、ご覧ととおり、目が大きくなっています。二重は控えめの幅にしましたから、奥二重のままです。しかも挙筋を強化したと同時に目頭切開をしたために、開瞼がよくなり、二重の幅は広くなっていません。

何度か説明したように、眼の大きさは、二重の広さとは相関しません。開瞼は挙筋の強さと、開瞼に対する抵抗力のバランスです。抵抗力の第一は、一重瞼等を原因とする皮膚の被さりで、これが瞼縁を覆っていたら、開瞼は損なわれます。第二に眼輪筋の強さ、目を細める癖です。これは精神神経的な問題でもあるのでまたとします。第三に、これは皮膚と眼輪筋の要素でもありますが、蒙古襞の程度、突っ張りが開瞼に対する抵抗の要因として大きなウェイトを占めている方が多いのです。

今回は同時に施行した切らない眼瞼下垂手術NILT法とZ-形成法の目頭切開術が、どれだけ開瞼を改良するかがよくわかる症例です。

ここで、もう一度Z-形成法による目頭切開術が、いかに意味がある手術か、そのメカニズムと理論をシミュレーションしてみました。何をするのかというとガーゼで実演し、計測します。

まず実物でのデザイン。各辺4mmで60度のZを、描きます。縦の辺が突っ張りの方向でこれを延長したいのです。下の角は蒙古襞の際した点です。右図はそれをガーゼに書きました。本来は目頭には、表と裏の皮膚がありますから、下左図の様に、折りたたまれているのです。下右図は物差しで計測、各辺4cmで作りました。

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これを切開すると、ガーゼでは図のようになります。右図は実物での切開後→皮膚を持ち上げると二つの三角の皮弁が勝手に入れ替わっています。突っ張りがあったので引っ張られているからです。

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実物でこれを縫合した直後が下図です。下右図は切開したガーゼの三角皮弁を入れ替えて、テープで張ったところです。物差しで測ると、縦が7cmに伸びています。

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ガーゼでのシミュレーションを前後で並べるとこれが蒙古襞部の皮膚だとすると、4mmが7mmに伸びることが確認できます。横方向には7mmが4mmに縮まっています。

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実際には目頭部には、表と裏の皮膚があるので、半分の1.5mm開きます。

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この理論を計算するために、今度は机上の解説をします。

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上図で左の様にa点とb点を蒙古襞の稜線上にデザインするとします。ab間を4mmとします。60度のZ型をデザインします。計算を解りやすくするために、cd間に点線を引いておきます。これを入れ替えたら図中右の様になります。c点とb点に皮弁のb点とa点がくっつくので( )内に記しました。

さて図の左で4mmだったab間は図の右では何mmになるかは、高校で習う幾何学で計算しましょう。正三角形acdがあります。ac間は4mmです。a点からの垂線を点示してあります。ae間とce間は計算できます。三角形aceの∠aceは60度、∠aecは直角=90度ですから、∠caeは180度-60度-90度=30度ですよね。通常ここからは、sin,cos,tanの計算になるのですが、角度60度の場合計算不要でしたよね。tan60°が√3なのはやはり高校で習います。したがって、acが4mmなら、aeは2√3、abは4√3ですね。√3は、ヒトナミニオゴレヤで、1.7320508だから、4√3は約6.928で約7mmになるのです。

計算上、目頭部分の皮膚が縦に3mm延長して、1.5mm目頭が開く、両側ですから、目頭間距離は3mm短縮する。この症例では術前に37mmだったのが、先日の術後計測では計算通り34mmとなりました。縦の長さは計測できないのですが、画像上目が大きく開くようになったのは確かでしょう。

この様に目頭切開は開瞼を良好化して、目をパッチリさせる手術です。目を寄せるのが目的ではありません。他院では、偏った考え方で手術している場合が少なからず見られます。よく当院に再来されます。特に、三日月形に皮膚を切除するだけの方法などの、縦に伸びないデザインで行うと、開き過ぎているのに、突っ張りは傷跡のために余計にひどくなってしまった症例があるクリニックで散発しています。もっとも私ならその場合でもZ-形成術で治せます。次回そのケースを提示します。

これまでにも何度も述べました通り、美容医療は、機能と形態のバランスを取って改善しなければ意味がないと思います。良好な形態は良好な機能を呈する。良好な機能は良好な形態に宿る。

眼頭切開は、開瞼という機能と眼の窓の横のサイズを拡大するというバランスを重視する典型的な手術だと思います。

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